令和3年版 中小企業白書
この年版の概要
感染症の流行で急激に悪化した業況と、資金繰り支援により倒産が低水準にとどまった令和2年度の動向を分析。第2部「危機を乗り越える力」として、財務基盤と経営戦略の見直し、デジタル化、事業承継・M&Aによる経営資源の活用を示す。
令和3年版 中小企業白書は、経済産業省(中小企業庁 事業環境部 調査室)が2021年4月に公表した中小企業白書の令和3年版です。中小企業白書は中小企業基本法に基づき、中小企業の動向と講じた施策を毎年国会に報告するもので、例年毎年4月下旬(小規模企業白書と同時に公表)に公表されています。 翌年版は令和4年版 中小企業白書、前年版は令和2年版 中小企業白書です。
公表当時の背景
2020年春以降の感染症拡大で、飲食・宿泊などを中心に中小企業の売上が急減し、政府は実質無利子・無担保融資や持続化給付金などで資金繰りを大規模に支えた。緊急事態宣言の再発出など先行きの不透明感が続く中、白書は2021年4月23日に閣議決定され、支援策が倒産を抑えた効果を確認するとともに、借入の増加を踏まえた財務基盤の確保と、デジタル化や事業承継・M&Aによる事業継続力の強化をテーマに据えた。
この年版のポイント
正式名称・テーマ: 2021年版 中小企業白書 / 第1部 令和2年度の中小企業の動向/第2部 危機を乗り越える力
- 第1部では、中小企業の業況判断DIが、感染症の流行で経済社会活動が停滞したことにより2020年4〜6月期に急激に悪化し、その後持ち直しの動きは見られるものの依然として厳しい状況が続いていると分析している。大企業と比べ、売上が大きく落ち込む局面での耐性が低いとも推察している。
- 政府による資金繰り支援や持続化給付金などの効果により、企業の倒産件数は感染症流行前と比べても低水準にとどまっていると分析している。一方、2021年3月時点のアンケートでは7割超の企業が感染症による企業活動への影響が継続していると回答しており、影響の広がりを示している。
- 第2部第1章では、感染症流行下の大規模な資金繰り支援が中小企業を取り巻く金融環境に与えた影響を確認している。業種による財務構造の違いや財務への意識と業績の関係を踏まえ、財務の安全性を確保しつつ、時代の変化に合わせて経営戦略を見直すことの重要性を指摘している。
- 第2章では事業継続力と競争力を高めるデジタル化を取り上げ、生産性向上や働き方改革に加え、事業継続力の強化の観点からもデジタル化の重要性が高まっているとして、ITツール利活用の現状と課題を明らかにしている。環境変化に柔軟に対応した企業ほど売上の回復が早いとも分析している。
- 第3章では事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用を扱っている。M&Aに関する意識調査や統計資料に始まり、実際にM&Aを実施した企業の事例と効果検証まで、50ページ以上にわたって事業承継やM&Aを企業の成長につなげる取組を分析している。
出典: 中小企業庁「2021年版 中小企業白書」概要 をもとに白書ポータル編集部が要約。数値は資料記載時点のもの。
前年版からの変化
前年版の令和2年版 中小企業白書と比べて、主に次の点が変わっています。
- 2020年版が公表直前の情報で感染症の影響に触れるにとどまったのに対し、2021年版は感染症流行下の1年間の業況・倒産・資金繰りを第1部で分析し、感染症が全編を通じた問題意識となった。
- 第2部のテーマは付加価値の創出・獲得から「危機を乗り越える力」へ移り、財務基盤と経営戦略、デジタル化、事業承継・M&Aの3章で、感染症下での事業継続とその後の成長の両立を扱う構成となった。
- 2020年版が経営者の高齢化と後継者不足を廃業の背景として示したのに続き、2021年版は事業承継とM&Aに独立した章を設け、経営資源の引継ぎを事例と効果検証を交えて分析した。
主なキーワード
中小企業白書とは
中小企業白書は、中小企業庁が中小企業の業況、経営課題、政府の支援施策を毎年国会に報告する法定白書です。第1部で景況・倒産・資金調達などの動向を概観し、第2部でその年のテーマ(価格転嫁と賃上げ、省力化投資、事業承継、スタートアップ、海外展開など)を企業アンケートと事例で分析します。2015年版以降は小規模事業者に焦点を当てた「小規模企業白書」も同時に刊行されています。
- 第1部: 中小企業の動向(業況、倒産・休廃業、雇用、資金繰り、物価と価格転嫁)
- 第2部: テーマ分析(投資、賃上げ、事業承継、経営力向上など)
- 附属統計資料: 中小企業の企業数・従業者数・付加価値などの基礎統計
- 講じようとする施策: 翌年度の中小企業施策の方針
PDF資料(経済産業省公式サイト)
白書本文は経済産業省の公式サイトで PDF として無償公開されています。章ごとの分割 PDF と全文 PDF が用意されているのが一般的です。
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約30年ぶりの賃上げ水準が続く一方で原資の確保が課題となる中、労働供給制約社会で深刻化する人手不足を踏まえて中小企業の動向と労働生産性の向上に有効な取組を分析。価格転嫁やAI活用を通じ、戦略を持った経営で「稼ぐ力」を高め「強い中小企業」へ成長する道筋を示す。
円安・物価高と約30年ぶりの「金利のある世界」の到来を踏まえ、コストカットから設備投資・価格転嫁による付加価値向上への経営転換を提起。経営者の「経営力」を個人特性・戦略策定・組織人材の3つの観点で分析し、売上高規模ごとの「成長の壁」の打破策を示す。
能登半島地震の被災地域の状況やコロナ禍後の倒産・雇用の推移を含め、人手不足と原材料価格の上昇が続く令和5年度の動向を分析。第2部では人への投資、設備投資、M&A、研究開発投資による成長と、資金調達や支援機関の役割を示す。
業況が感染症流行前の水準に戻りつつある一方、物価高騰と深刻な人手不足が続く令和4年度の動向を分析。第2部「変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業」として、価値創出の戦略と経営者の役割、新たな担い手の創出、成長を支える共通基盤を示す。
感染症の長期化に原油・原材料価格の高騰や部材調達難、人材不足が重なる令和3年度の動向を分析。第2部「新たな時代へ向けた自己変革力」として、事業再構築、ブランド構築や人的投資などの無形資産投資、取引適正化と伴走支援を示す。
新型コロナウイルス感染症の影響を冒頭で取り上げつつ、令和元年度の中小企業の動向を労働生産性・新陳代謝・多様性の観点から分析。第2部では付加価値の創出と、適正な価格設定・取引関係の構築による付加価値の獲得に向けた取組を示す。
出典と引用について
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