令和2年版 中小企業白書
この年版の概要
新型コロナウイルス感染症の影響を冒頭で取り上げつつ、令和元年度の中小企業の動向を労働生産性・新陳代謝・多様性の観点から分析。第2部では付加価値の創出と、適正な価格設定・取引関係の構築による付加価値の獲得に向けた取組を示す。
令和2年版 中小企業白書は、経済産業省(中小企業庁 事業環境部 調査室)が2020年4月に公表した中小企業白書の令和2年版です。中小企業白書は中小企業基本法に基づき、中小企業の動向と講じた施策を毎年国会に報告するもので、例年毎年4月下旬(小規模企業白書と同時に公表)に公表されています。 翌年版は令和3年版 中小企業白書です。
公表当時の背景
2019年度は人手不足が続く中で消費税率の引上げが行われ、中小企業の業況は横ばいから低下傾向にあった。年明け以降は新型コロナウイルス感染症が拡大し、国内消費の落ち込みで売上が急減する企業が相次ぎ、政府は資金繰り支援の拡充を急いだ。白書は緊急事態宣言下の2020年4月24日に閣議決定され、感染症の影響を冒頭で速報的に扱う一方、本編では中長期の課題である労働生産性と付加価値の向上をテーマに据えた。
この年版のポイント
正式名称・テーマ: 2020年版 中小企業白書 / 第1部 令和元年度の中小企業の動向/第2部 新たな「価値」を生み出す中小企業
- 冒頭で新型コロナウイルス感染症の影響を2020年4月1日時点の情報に基づいて整理し、国内消費の大幅な減少により中小企業の業況は総じて悪化したと分析している。2020年3月時点の民間調査で中小企業の5割以上が既に影響が出ていると回答したことも紹介している。
- 第1部第1章では我が国経済と中小企業の現状を概観し、景況調査の業況判断DIが2019年以降横ばいから低下傾向で推移していたことを示している。あわせて人手不足の状況や消費税率引上げの影響、中小企業を取り巻く各種のリスクについても整理している。
- 第2章では中小企業・小規模事業者の労働生産性の推移を分析し、大企業はリーマン・ショック後に大きく落ち込んだ後、緩やかな上昇傾向で推移している一方、中小企業は大きな落ち込みはないものの長らく横ばいが続き、足元では大企業との差が徐々に拡大していると指摘している。
- 第3章では企業の新陳代謝、第4章では中小企業の多様性と役割・機能を分析している。生産性の高い企業の廃業の背景には経営者の高齢化と後継者不足があると考えられるとし、企業の貴重な経営資源を散逸させない事業承継の取組が重要性を増していると示している。
- 第2部「新たな『価値』を生み出す中小企業」の第1章では、事業領域・分野の見直し、製品・サービスの差別化、無形資産の有効活用、外部連携・オープンイノベーションの推進による付加価値の創出を分析し、第2章・第3章で付加価値の獲得に向けた適正な価格設定と取引関係の構築を扱っている。
出典: 中小企業庁「2020年版 中小企業白書」概要 をもとに白書ポータル編集部が要約。数値は資料記載時点のもの。
前年版からの変化
- 2019年版が「令和時代の中小企業の活躍に向けて」として経営者の世代交代と事業承継を中心に据えたのに対し、2020年版は付加価値の創出と獲得を第2部の主題とし、労働生産性の向上に焦点を移した。
- 2019年版は動向・経営者の交代・自己変革の3部構成だったが、2020年版は動向分析の第1部とテーマ分析の第2部の2部構成となり、第1部に労働生産性・新陳代謝・多様性の章を設けて中小企業の構造を分析した。
- 2019年版が自然災害への備えを扱ったのに続き、2020年版は公表直前に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響を、2020年4月1日時点の情報に基づいて冒頭に盛り込んだ。
主なキーワード
中小企業白書とは
中小企業白書は、中小企業庁が中小企業の業況、経営課題、政府の支援施策を毎年国会に報告する法定白書です。第1部で景況・倒産・資金調達などの動向を概観し、第2部でその年のテーマ(価格転嫁と賃上げ、省力化投資、事業承継、スタートアップ、海外展開など)を企業アンケートと事例で分析します。2015年版以降は小規模事業者に焦点を当てた「小規模企業白書」も同時に刊行されています。
- 第1部: 中小企業の動向(業況、倒産・休廃業、雇用、資金繰り、物価と価格転嫁)
- 第2部: テーマ分析(投資、賃上げ、事業承継、経営力向上など)
- 附属統計資料: 中小企業の企業数・従業者数・付加価値などの基礎統計
- 講じようとする施策: 翌年度の中小企業施策の方針
PDF資料(経済産業省公式サイト)
白書本文は経済産業省の公式サイトで PDF として無償公開されています。章ごとの分割 PDF と全文 PDF が用意されているのが一般的です。
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約30年ぶりの賃上げ水準が続く一方で原資の確保が課題となる中、労働供給制約社会で深刻化する人手不足を踏まえて中小企業の動向と労働生産性の向上に有効な取組を分析。価格転嫁やAI活用を通じ、戦略を持った経営で「稼ぐ力」を高め「強い中小企業」へ成長する道筋を示す。
円安・物価高と約30年ぶりの「金利のある世界」の到来を踏まえ、コストカットから設備投資・価格転嫁による付加価値向上への経営転換を提起。経営者の「経営力」を個人特性・戦略策定・組織人材の3つの観点で分析し、売上高規模ごとの「成長の壁」の打破策を示す。
能登半島地震の被災地域の状況やコロナ禍後の倒産・雇用の推移を含め、人手不足と原材料価格の上昇が続く令和5年度の動向を分析。第2部では人への投資、設備投資、M&A、研究開発投資による成長と、資金調達や支援機関の役割を示す。
業況が感染症流行前の水準に戻りつつある一方、物価高騰と深刻な人手不足が続く令和4年度の動向を分析。第2部「変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業」として、価値創出の戦略と経営者の役割、新たな担い手の創出、成長を支える共通基盤を示す。
感染症の長期化に原油・原材料価格の高騰や部材調達難、人材不足が重なる令和3年度の動向を分析。第2部「新たな時代へ向けた自己変革力」として、事業再構築、ブランド構築や人的投資などの無形資産投資、取引適正化と伴走支援を示す。
感染症の流行で急激に悪化した業況と、資金繰り支援により倒産が低水準にとどまった令和2年度の動向を分析。第2部「危機を乗り越える力」として、財務基盤と経営戦略の見直し、デジタル化、事業承継・M&Aによる経営資源の活用を示す。
出典と引用について
本ページの概要・解説は白書ポータル編集部が経済産業省の公式ページと白書本文をもとに執筆したものです。 白書本文の著作権は経済産業省に帰属します。本文の数値・図表を引用する際は「令和2年版 中小企業白書」と該当ページを明記し、経済産業省の利用規約に従ってください。