令和5年版 犯罪白書
この年版の概要
令和4年の刑法犯認知件数が60万1,331件と20年ぶりに増加に転じ、少年の刑法犯検挙人員も19年ぶりに増えた動向を整理。非行少年と生育環境を特集し、少年法制の変遷や少年院在院者等への特別調査から、逆境体験や被虐待経験の実態を分析。
令和5年版 犯罪白書は、法務省(法務省 法務総合研究所)が2023年11月に公表した犯罪白書の令和5年版です。犯罪白書は法定白書ではなく、法務総合研究所が刊行する年次報告で、例年毎年11月〜12月に公表されています。 翌年版は令和6年版 犯罪白書、前年版は令和4年版 犯罪白書です。
公表当時の背景
令和5年の公表時は、同年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行して社会経済活動の正常化が進み、行動制限の緩和とともに令和4年の刑法犯認知件数が20年ぶりに増加に転じていた。同年3月には第二次再犯防止推進計画が閣議決定された。少年の検挙人員も19年ぶりに増加する中で、非行の背景にある生育環境や逆境体験、被虐待経験に焦点を当てた特集が組まれた。
この年版のポイント
正式名称・テーマ: 令和5年版 犯罪白書 / 特集 非行少年と生育環境
- 令和4年の刑法犯認知件数は60万1,331件(前年比5.8%増)で、平成14年の戦後最多から19年連続で続いた減少が止まり、20年ぶりに増加した。増加後も窃盗は40万7,911件と刑法犯全体の7割近くを占めており、認知件数の動きを左右する構造は変わっていないと整理している。
- 少年による刑法犯の検挙人員は、長らく大幅な減少が続いていたが、令和4年は19年ぶりに前年から増加した。その一方で、凶悪・重大な事件や動機が不可解な事件も後を絶たないことから、少年非行をめぐる情勢は決して楽観視できる状況にはないと整理している。
- 特集「非行少年と生育環境」では、少年法制等の変遷、少年を取り巻く生育環境等の変化、昨今の少年の状況を概観し、白書として初めて非行少年の幼少期の状況に焦点を当てて、家庭や学校など生育環境と非行との関係を、少年院在院者等への特別調査も用いて分析している。
- 特別調査として、少年院在院者と保護観察処分少年、その保護者への質問紙調査を実施し、12項目の逆境体験(ACE)の有無を調べている。ACEを有する者は少年院在院者で86.3%、保護観察処分少年で56.5%で、処遇段階によって大きな差があったとしている。
- 令和3年に少年院に入所していた13〜19歳の男女591人の回答では、家族から身体的な暴力を受けた経験が約6割、精神的な暴力を受けた経験が4割を超えた。少年院入院者の記録上も、男子の約40%、女子の約60%が被虐待経験を申告していたとしている。
出典: 法務省「令和5年版 犯罪白書のあらまし」 をもとに白書ポータル編集部が要約。数値は資料記載時点のもの。
前年版からの変化
前年版の令和4年版 犯罪白書と比べて、主に次の点が変わっています。
- 前年版まで続いていた刑法犯認知件数の戦後最少の更新が止まり、令和4年は20年ぶりに増加に転じた。少年の刑法犯検挙人員も19年ぶりに増加し、長期の減少局面からの転換が示された。
- 特集は前年版のコロナ禍と刑事政策から非行少年と生育環境に移り、前年版の犯罪者・非行少年の生活意識と価値観の分析に続いて、非行少年の幼少期の逆境体験や被虐待経験など生育環境に焦点を当てた。
主なキーワード
犯罪白書とは
犯罪白書は、法務省法務総合研究所が刑法犯の認知件数、検挙、起訴、裁判、矯正、更生保護までの刑事司法の全過程を統計で示す年次報告です。前半で犯罪の動向と処遇の現状を毎年同じ構成で更新し、後半の特集で特定のテーマ(高齢者犯罪、再犯防止、性犯罪、薬物、少年非行の長期動向など)を深く分析します。
- 第1編: 犯罪の動向(刑法犯・特別法犯の認知・検挙状況)
- 第2編: 犯罪者の処遇(検察、裁判、矯正、更生保護)
- 第3編: 少年非行の動向と非行少年の処遇
- 第4編: 各種犯罪の動向と対策(交通、薬物、組織犯罪、外国人、高齢者など)
- 第5編以降: 再犯・再非行の状況と特集テーマ
- 資料統計: 長期時系列の統計表
PDF資料(法務省公式サイト)
白書本文は法務省の公式サイトで PDF として無償公開されています。章ごとの分割 PDF と全文 PDF が用意されているのが一般的です。
PDF版を閲覧する(外部サイト) →犯罪白書の他の年版
刑法犯認知件数が3年連続で増加し73.8万件に。少年の検挙人員の増加、18年ぶりに増えた入所受刑者と拘禁刑の運用開始を整理し、犯罪被害実態(暗数)調査と精神障害を有する者の性犯罪被害を特集。
令和5年の刑法犯認知件数が70万3,351件と2年連続で増加し、少年の検挙人員や大麻取締法違反の若年層の増加が目立つ動向を整理。女性犯罪者の実態と処遇を特集し、女性受刑者への特別調査から精神疾患や被害経験、高齢女性による万引きの背景を分析。
令和3年の刑法犯認知件数が56万8,104件と19年連続で減少して戦後最少を更新する一方、再犯者率が48.6%と高止まりしている動向を整理。新型コロナウイルス感染症と刑事政策、犯罪者・非行少年の生活意識と価値観の2テーマを特集。
令和2年の刑法犯認知件数が前年比17.9%減の61万4,231件と18年連続で減少し、戦後最少を更新した動向を整理。詐欺事犯者の実態と処遇を特集し、検挙人員の約7割を30歳未満が占める特殊詐欺の動向や処遇、再犯の状況を分析し、京都コングレスの成果も紹介。
令和元年の刑法犯認知件数が約74万8,500件と17年連続で減少して戦後最少を更新する一方、検挙人員に占める65歳以上の割合が22.0%に達した動向を整理。薬物犯罪を特集し、覚醒剤事犯をはじめとする薬物犯罪の動向、薬物事犯者の処遇の現状と再犯の状況を分析。
出典と引用について
本ページの概要・解説は白書ポータル編集部が法務省の公式ページと白書本文をもとに執筆したものです。 白書本文の著作権は法務省に帰属します。本文の数値・図表を引用する際は「令和5年版 犯罪白書」と該当ページを明記し、法務省の利用規約に従ってください。