令和3年版 防衛白書

防衛省令和3年版公開: 2021年7月ページ最終更新 執筆: 白書ポータル編集部

この年版の概要

「米国と中国の関係など」の節を新設し、米中間の軍事的なパワーバランスの変化と、台湾情勢の安定がわが国の安全保障にとって重要であることを初めて記述。中国海警の活動、コロナ禍の防衛省・自衛隊、防衛関係費5兆3,422億円、緊急発進725回などを整理。

令和3年版 防衛白書は、防衛省(防衛省 大臣官房)が2021年7月に公表した防衛白書の令和3年版です。防衛白書は法定白書ではなく、閣議に報告したうえで刊行する年次報告で、例年毎年7月に公表されています。 翌年版は令和4年版 防衛白書、前年版は令和2年版 防衛白書です。

公表当時の背景

2021年1月に米国でバイデン政権が発足し、4月の日米首脳共同声明には台湾海峡の平和と安定の重要性が盛り込まれた。2月には中国で海警法が施行され、尖閣諸島周辺での海警船の活動も続いた。国内では新型コロナウイルス感染症の流行が続き、自衛隊は5月から東京・大阪で大規模接種センターを運営した。白書は米中対立の深まりと台湾をめぐる国際的な関心の高まりを受け、米中関係の節の新設と台湾情勢の記述に踏み込んでいる。

この年版のポイント

  1. 第I部第2章に「米国と中国の関係など」の節を新設し、米中関係の動向を独立した節で取り上げている。米中間で軍事的なパワーバランスの変化が生じており、それがインド太平洋地域の平和と安定に影響を及ぼす可能性があると言及するなど、米中関係に関する記述を前年版より大幅に拡充している。
  2. 台湾情勢について初めて見解を示し、台湾をめぐる情勢の安定は、わが国の安全保障や国際社会の安定にとって重要であると記述している。あわせて、米国による台湾への武器売却や米海軍艦艇による台湾海峡の通過などを取り上げ、台湾海峡をめぐる緊張が高まる可能性にも触れている。
  3. 中国については、国防費の急速な拡大と海軍力をはじめとする軍事力の増強を指摘し、尖閣諸島周辺における中国海警船の活動を国際法に違反するものとして取り上げている。巻頭の防衛大臣の言葉でも、東シナ海・南シナ海における一方的な現状変更の試みに言及している。
  4. 2020年を新型コロナウイルス感染症により世界全体がこれまで経験したことのない困難に直面した年と位置づけ、感染症が既存の安全保障上の課題を一層顕在化させたと記述している。感染拡大の下で岸防衛大臣が例年以上に電話会談を重ねたことなど、コロナ禍における防衛協力・交流の工夫も紹介している。
  5. 令和3年度の防衛関係費は前年度比289億円増の5兆3,422億円と記述している。2020年度の緊急発進は725回(中国機458回、ロシア機258回)。宇宙分野では宇宙作戦隊の上級部隊として宇宙作戦群(仮称)を新編する計画を示し、北朝鮮やロシアの動向、新たな領域の重要性も取り上げている。

出典: 防衛省「令和3年版 防衛白書」紹介ページ をもとに白書ポータル編集部が要約。数値は資料記載時点のもの。

前年版からの変化

前年版の令和2年版 防衛白書と比べて、主に次の点が変わっています。

  • 令和2年版が刊行50年の歩みを特集したのに対し、令和3年版は「米国と中国の関係など」の節を新設し、米中間の軍事的なパワーバランスの変化を安全保障環境の分析の柱の一つに据えた。
  • 台湾情勢の安定がわが国の安全保障や国際社会の安定にとって重要であると初めて明記し、台湾に関する記述に前年版より踏み込んでいる。米国による台湾への武器売却や台湾海峡の通過など、台湾周辺の具体的な動きも新たに取り上げている。
  • 特集・ダイジェストなどを別冊化し、関連動画にアクセスできるQRコードを掲載するなど、本文以外の媒体による発信の仕方を見直している。前年版までは本冊に収めていた特集とダイジェストを独立させ、手に取りやすくしている。

主なキーワード

米中関係台湾情勢中国海警

防衛白書とは

防衛白書は、防衛省が日本を取り巻く安全保障環境と防衛政策を国民に説明するために毎年刊行する報告書です。周辺国の軍事動向の分析、国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画(いわゆる安保三文書)に基づく政策、自衛隊の活動実績、防衛関係費、防衛産業や人的基盤の課題までを網羅します。

例年の構成
  • 第I部: わが国を取り巻く安全保障環境(各国・地域の軍事動向、宇宙・サイバー・電磁波などの新領域)
  • 第II部: わが国の安全保障・防衛政策(安保三文書、防衛力整備の考え方、防衛関係費)
  • 第III部: 防衛目標を実現するための取組(自衛隊の活動、日米同盟、防衛協力・交流)
  • 第IV部: 共通基盤の強化(人的基盤、防衛生産・技術基盤、地域社会との関わり)
  • 資料編: 条約・法令・部隊配置・装備品の一覧
防衛白書の読み方・法的根拠・活用シーンを読む →

PDF資料(防衛省公式サイト)

白書本文は防衛省の公式サイトで PDF として無償公開されています。章ごとの分割 PDF と全文 PDF が用意されているのが一般的です。

PDF版を閲覧する(外部サイト) →

防衛白書の他の年版

令和8年版 防衛白書
公開: 2026.08

テーマ「未来につながる安全保障」のもと、防衛装備移転三原則の改正と三文書の前倒し改定の年にあたり、「新しい戦い方をめぐる動向」の章と防衛生産・技術基盤の部を新設。防衛関係費8.8兆円、緊急発進595回、自衛官の充足率約9割などを記述。

令和7年版 防衛白書
公開: 2025.07

2025年3月に設置した統合作戦司令部と、自衛官の処遇・勤務環境の改善を巻頭で特集。防衛関係費8.4兆円、中国軍機による領空侵犯、緊急発進704回、第2期トランプ政権の成立など、安全保障環境の変化と防衛力強化の進捗を記述。

令和6年版 防衛白書
公開: 2024.07

自衛隊発足70年と白書刊行50回目の節目に、自衛隊70年の歩みを振り返る特集を巻頭に設置。三文書策定から1年間の防衛力の抜本的強化の進捗、防衛関係費7.7兆円、中国の核戦力の増強、緊急発進669回、防衛装備移転三原則の改正などを記述。

令和5年版 防衛白書
公開: 2023.07

2022年12月の国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の策定後初の白書として、三文書の策定経緯と概要を記述。2027年度までの防衛力の抜本的強化と7つの柱、5年間約43兆円の整備計画、「元年」予算とする防衛関係費6兆8,219億円を整理。

令和4年版 防衛白書
公開: 2022.07

ロシアによるウクライナ侵略を扱う章を新設し、国際社会は戦後最大の試練の時を迎えているとの認識を記述。台湾情勢の記述を前年版から大幅に拡充し、宇宙・サイバー・電磁波の新領域、防衛関係費5兆4,005億円、緊急発進1,004回などを整理。

令和2年版 防衛白書
公開: 2020.07

刊行50周年を記念し、1970年の創刊以来の白書の変遷を振り返る特集「防衛白書50年の歩み」を掲載。新型コロナウイルス感染症が各国の軍事活動に及ぼす影響と自衛隊の対応、宇宙作戦隊の新編をはじめとする新領域の取組、防衛関係費5兆3,133億円などを記述。

出典と引用について

本ページの概要・解説は白書ポータル編集部が防衛省の公式ページと白書本文をもとに執筆したものです。 白書本文の著作権は防衛省に帰属します。本文の数値・図表を引用する際は「令和3年版 防衛白書」と該当ページを明記し、防衛省の利用規約に従ってください。