令和2年版 防衛白書
この年版の概要
刊行50周年を記念し、1970年の創刊以来の白書の変遷を振り返る特集「防衛白書50年の歩み」を掲載。新型コロナウイルス感染症が各国の軍事活動に及ぼす影響と自衛隊の対応、宇宙作戦隊の新編をはじめとする新領域の取組、防衛関係費5兆3,133億円などを記述。
令和2年版 防衛白書は、防衛省(防衛省 大臣官房)が2020年7月に公表した防衛白書の令和2年版です。防衛白書は法定白書ではなく、閣議に報告したうえで刊行する年次報告で、例年毎年7月に公表されています。 翌年版は令和3年版 防衛白書です。
公表当時の背景
2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大で始まり、自衛隊もクルーズ船への対応をはじめ感染症対策の災害派遣に当たった。一方で北朝鮮の弾道ミサイル発射や尖閣諸島周辺での中国海警船の活動は続き、6月にはイージス・アショアの配備プロセス停止が表明された。白書はこうした中で感染症と安全保障の関係を新たな論点に加え、刊行50年の節目には国民の理解を重視する創刊時の考え方を特集で振り返っている。
この年版のポイント
正式名称・テーマ: 令和2年版 防衛白書(日本の防衛) / 特集 防衛白書50年の歩み
- 1970年の創刊から刊行50周年を迎えたことを受け、特集「防衛白書50年の歩み」を設けている。総ページ数94ページの初版が、国の防衛には何よりも国民の理解と積極的な支持、協力が不可欠とする中曽根康弘防衛庁長官(当時)の信念のもとで作成された経緯を紹介し、1976年以降毎年刊行されてきた歩みを振り返っている。
- 2020年を新型コロナウイルス感染症により世界が前例のない困難に直面した年と位置づけ、感染症が各国の軍事活動に影響や制約を及ぼしていることに注目が必要と記述している。あわせて、感染症対策に総力を挙げて取り組んだ防衛省・自衛隊の活動や、中東地域における自衛隊の情報収集活動についても取り上げている。
- 安全保障環境については、既存の秩序をめぐる不確実性の高まり、いわゆるグレーゾーンの事態の長期化、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の重要性の増大を挙げている。巻頭の防衛大臣の言葉では、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や、中国による現状変更の試みにも言及している。
- 2020年5月18日、自衛隊初の宇宙領域専門部隊として宇宙作戦隊を新編したことを記述している。令和2年度の防衛力整備では宇宙・サイバー・電磁波の新領域における能力の獲得・強化を進める方針を示し、宇宙作戦隊の新編、宇宙状況監視(SSA)衛星の整備、電磁妨害状況の把握装置の取得などを挙げている。
- 令和2年度の防衛関係費は、前年度比559億円増の5兆3,133億円と記述している。白書の主な対象期間にあたる2019年度の緊急発進は947回で、このうち中国機に対するものが675回と全体の7割強を占め、ロシア機に対するものは268回であった。南西方面での対応が大半を占めている。
出典: 防衛省「防衛白書」トップページ(令和2年版は国立国会図書館アーカイブへのリンク) をもとに白書ポータル編集部が要約。数値は資料記載時点のもの。
前年版からの変化
- 令和元年版が2018年12月策定の防衛計画の大綱(30大綱)と中期防衛力整備計画を踏まえた最初の白書だったのに対し、令和2年版は刊行50周年の節目として、白書自体の歩みを振り返る特集を新たに設けた。
- 新型コロナウイルス感染症が各国の軍事活動に与える影響と、感染症対策における防衛省・自衛隊の活動という、前年版には無かった論点が加わった。巻頭の防衛大臣の言葉でも、感染症に対する防衛省・自衛隊の総力を挙げた活動を、北朝鮮や中国の動向と並べて取り上げている。
- 宇宙領域では、新領域の能力強化という大綱の方針から一歩進み、2020年5月の宇宙作戦隊新編という具体的な部隊整備の段階に入ったことを記述している。宇宙状況監視衛星の整備など、令和2年度の整備事項も具体的に示している。
主なキーワード
防衛白書とは
防衛白書は、防衛省が日本を取り巻く安全保障環境と防衛政策を国民に説明するために毎年刊行する報告書です。周辺国の軍事動向の分析、国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画(いわゆる安保三文書)に基づく政策、自衛隊の活動実績、防衛関係費、防衛産業や人的基盤の課題までを網羅します。
- 第I部: わが国を取り巻く安全保障環境(各国・地域の軍事動向、宇宙・サイバー・電磁波などの新領域)
- 第II部: わが国の安全保障・防衛政策(安保三文書、防衛力整備の考え方、防衛関係費)
- 第III部: 防衛目標を実現するための取組(自衛隊の活動、日米同盟、防衛協力・交流)
- 第IV部: 共通基盤の強化(人的基盤、防衛生産・技術基盤、地域社会との関わり)
- 資料編: 条約・法令・部隊配置・装備品の一覧
PDF資料(防衛省公式サイト)
白書本文は防衛省の公式サイトで PDF として無償公開されています。章ごとの分割 PDF と全文 PDF が用意されているのが一般的です。
PDF版を閲覧する(外部サイト) →防衛白書の他の年版
テーマ「未来につながる安全保障」のもと、防衛装備移転三原則の改正と三文書の前倒し改定の年にあたり、「新しい戦い方をめぐる動向」の章と防衛生産・技術基盤の部を新設。防衛関係費8.8兆円、緊急発進595回、自衛官の充足率約9割などを記述。
2025年3月に設置した統合作戦司令部と、自衛官の処遇・勤務環境の改善を巻頭で特集。防衛関係費8.4兆円、中国軍機による領空侵犯、緊急発進704回、第2期トランプ政権の成立など、安全保障環境の変化と防衛力強化の進捗を記述。
自衛隊発足70年と白書刊行50回目の節目に、自衛隊70年の歩みを振り返る特集を巻頭に設置。三文書策定から1年間の防衛力の抜本的強化の進捗、防衛関係費7.7兆円、中国の核戦力の増強、緊急発進669回、防衛装備移転三原則の改正などを記述。
2022年12月の国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の策定後初の白書として、三文書の策定経緯と概要を記述。2027年度までの防衛力の抜本的強化と7つの柱、5年間約43兆円の整備計画、「元年」予算とする防衛関係費6兆8,219億円を整理。
ロシアによるウクライナ侵略を扱う章を新設し、国際社会は戦後最大の試練の時を迎えているとの認識を記述。台湾情勢の記述を前年版から大幅に拡充し、宇宙・サイバー・電磁波の新領域、防衛関係費5兆4,005億円、緊急発進1,004回などを整理。
「米国と中国の関係など」の節を新設し、米中間の軍事的なパワーバランスの変化と、台湾情勢の安定がわが国の安全保障にとって重要であることを初めて記述。中国海警の活動、コロナ禍の防衛省・自衛隊、防衛関係費5兆3,422億円、緊急発進725回などを整理。
出典と引用について
本ページの概要・解説は白書ポータル編集部が防衛省の公式ページと白書本文をもとに執筆したものです。 白書本文の著作権は防衛省に帰属します。本文の数値・図表を引用する際は「令和2年版 防衛白書」と該当ページを明記し、防衛省の利用規約に従ってください。