令和3年版 情報通信白書
この年版の概要
日本のデジタル化政策の歩みと国際指標での位置付けを振り返り、ICT投資の低迷や人材不足などデジタル化で後れを取った理由を分析。国民生活・企業活動・公的分野のデジタル活用の現状と課題、コロナ禍で加速したデジタル化、「誰一人取り残さない」デジタル化の展望を整理。
令和3年版 情報通信白書は、総務省(総務省 情報流通行政局 情報通信政策課 情報通信経済室)が2021年7月に公表した情報通信白書の令和3年版です。情報通信白書は法定白書ではなく、総務省が刊行する年次報告で、例年毎年7月に公表されています。 翌年版は令和4年版 情報通信白書、前年版は令和2年版 情報通信白書です。
公表当時の背景
2021年は新型コロナウイルス感染症の流行が長期化し、緊急事態宣言が繰り返される中でテレワークやオンライン消費が定着しつつあった年である。行政手続のデジタル化の遅れが改めて意識され、5月にデジタル改革関連法が成立し、9月のデジタル庁発足が控えていた。白書は7月30日に公表され、日本がデジタル化で後れを取った理由の分析と、「誰一人取り残さない」デジタル化の実現を特集の柱にしている。
この年版のポイント
正式名称・テーマ: 令和3年 情報通信に関する現状報告 / 特集 デジタルで支える暮らしと経済
- 序章では2000年頃以降の我が国のデジタル化政策の歴史、社会におけるデジタル化の進展状況と国際指標での位置付けを概観。デジタル化で後れを取った理由として、ICT投資の低迷、業務改革を伴わないICT投資、ICT人材の不足・偏在、過去の成功体験、デジタル化への不安感・抵抗感などを挙げている。
- ICT投資は1997年をピークに減少傾向にあり、その8割が現行ビジネスの維持・運営に充てられレガシーシステムが多く残ると指摘。大企業を中心にウォーターフォール型開発が主流でアジャイル開発の導入が遅れ、オープン化・クラウド化や業務・データの標準化が遅れたと分析している。
- 第1章では国民生活・企業活動・公的分野におけるデジタル活用の現状と課題を検証し、パーソナルデータの活用やデジタル活用支援を取り上げている。公的分野では電子政府・電子自治体の経緯を整理し、今後のデジタル・ガバメント構築に向けた取組を考察している。
- 第2章ではコロナ禍で加速するデジタル化として、サプライチェーンの分断、オンライン消費の拡大、テレワーク等の企業活動の変化を整理。民間調査を引き、企業のテレワーク実施率が1回目の緊急事態宣言時に17.6%から56.4%へ上昇し、2回目の宣言時に38.4%へ再上昇したことを示している。
- 第3章では「誰一人取り残さない」デジタル化の実現に向けた展望を示し、感染症や自然災害に強い社会を目指すうえで、利用者のデジタル活用能力の向上と、公的分野と民間企業のデジタル化を戦略的かつ一体的に進める必要性を指摘している。令和3年版は昭和48年の第1回から数えて49回目の公表にあたる。
出典: 総務省「令和3年版 情報通信白書のポイント」 をもとに白書ポータル編集部が要約。数値は資料記載時点のもの。
前年版からの変化
前年版の令和2年版 情報通信白書と比べて、主に次の点が変わっています。
- 令和2年版が5Gという通信基盤とその先のBeyond 5Gを軸にしたのに対し、令和3年版は社会全体のデジタル化に視点を広げ、国民生活・企業活動・公的分野のデジタル活用を横断的に検証する構成となった。
- 2000年頃以降のデジタル化政策の歴史を振り返る序章を設け、国際指標での位置付けを踏まえて、ICT投資の低迷や人材の不足・偏在など日本がデジタル化で後れを取った理由を正面から分析している。
- コロナ禍の扱いは、令和2年版の「新たな日常」の展望から、1年を経て実際に加速したサプライチェーンやオンライン消費、テレワークなどのデジタル化の実態と、誰一人取り残さないための課題へと移っている。
主なキーワード
情報通信白書とは
情報通信白書は、総務省が ICT(情報通信技術)分野の動向を毎年まとめる報告書です。通信・放送・インターネット・デジタルサービスの利用実態や産業規模を、総務省の通信利用動向調査や独自のアンケート・国際比較調査をもとに整理しています。前半は年ごとの特集テーマ(近年は AI・データ流通・デジタル化と地域など)、後半は毎年同じ構成で統計を更新する「現状と課題」編という二部構成が定着しています。
- 第1部: 特集(その年のテーマを掘り下げる分析編)
- 第2部: 情報通信分野の現状と課題(ICT 市場、通信・放送・郵便、利用動向、政策の動き)
- 巻末資料: 用語解説、図表一覧
PDF資料(総務省公式サイト)
白書本文は総務省の公式サイトで PDF として無償公開されています。章ごとの分割 PDF と全文 PDF が用意されているのが一般的です。
PDF版を閲覧する(外部サイト) →情報通信白書の他の年版
個人の生成AI利用経験率が58.8%へ急上昇し、企業の86.4%が何らかの業務で生成AIを利用するなど、AIの進展が個人・企業・社会に与える影響を特集。情報通信産業のGDP71.7兆円、民間情報化投資25.7兆円などICT市場の動向も整理。
21世紀に入り四半世紀となる2025年を節目に、SNS・クラウドなど「社会基盤」化したデジタルの広がりとAIの急速な進展を特集。生成AI利用率の上昇、デジタル分野での海外事業者の台頭、偽・誤情報対策、サイバーセキュリティなどの課題と展望を整理。
令和6年能登半島地震における通信・放送・郵便インフラの被害と復旧、災害時の情報入手やSNS上の偽・誤情報の拡散を特集。AI・メタバース・ロボット・自動運転などデジタルテクノロジーの発展と経済社会への影響、生成AIのリスク対応やルール整備の動向を整理。
通信インフラの高度化とデータ流通の進展を踏まえ、メタバースや生成AIなどデータを活用した新たなサービスの動向と、企業・消費者のデータ活用に関する意識を分析。SNS上の誹謗中傷や偽・誤情報など、強靱で健全なデータ流通社会の実現に向けた課題を整理。
白書刊行から50年を節目に、1973年以降のICTサービス・技術の高度化とICTを取り巻く国際情勢の変化を5つの時期に分けて振り返る特集。生産年齢人口の減少や災害の激甚化、データ流通の増加などの課題を踏まえ、今後の日本社会でICTが果たす役割を展望。
新型コロナウイルス感染症を契機とする新たな日常を見据え、2020年3月に商用サービスが始まった5Gが経済社会にもたらすデジタル変革を特集。データ流通と5G時代のサイバーセキュリティ、2030年代の社会像とBeyond 5Gに向けた動向も整理。
出典と引用について
本ページの概要・解説は白書ポータル編集部が総務省の公式ページと白書本文をもとに執筆したものです。 白書本文の著作権は総務省に帰属します。本文の数値・図表を引用する際は「令和3年版 情報通信白書」と該当ページを明記し、総務省の利用規約に従ってください。