女性活躍とジェンダーギャップ — 9 つの白書はどう扱ってきたか

女性活躍とジェンダーギャップは、男女共同参画白書が毎年の特集で正面から扱うテーマです。一方で、経済財政白書は女性の就業と出生や男女間の賃金格差を、厚生労働白書は感染症が女性に与えた影響を、食料・農業・農村白書は女性農業者を、犯罪白書は女性犯罪者や性的な被害を取り上げています。各白書の切り口を重ねると、課題の広がりが見えてきます。

女性活躍は、女性が仕事や地域、政治などの場で希望に応じて力を発揮できる社会を目指す考え方で、ジェンダーギャップは、性別によって生じている就業・賃金・家事負担・意思決定への参画などの差を指します。日本では女性の就業者数が増える一方、出産を契機とした非正規雇用化や家事・育児の負担の偏り、首長や議員など意思決定の場に占める女性の割合の低さが、白書でも繰り返し課題として示されています。世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数における日本の順位の低さも、白書の中で言及されています。

このテーマの中心は、内閣府男女共同参画局がまとめる男女共同参画白書です。白書は毎年の特集で、家事・育児・介護と仕事の時間配分、コロナ下の女性への影響、結婚と家族、「令和モデル」への転換、仕事と健康の両立、地域と人口移動、学び直しと、異なる角度から男女の差を分析してきました。これに加えて、経済財政白書は労働市場と賃金の観点から、厚生労働白書は社会保障の観点から、食料・農業・農村白書は農業の担い手の観点から、犯罪白書は犯罪と被害の観点から、性別による違いを取り上げています。

最初に読むなら、共働き世帯の増加を背景に約40年間の男女の生活時間を分析した令和2年版男女共同参画白書が、家庭内の分担の偏りという基本的な構図を理解する入口になります。続いて「昭和モデル」から「令和モデル」への転換を提唱した令和5年版、性別・年代で異なる健康課題を扱った令和6年版へと進むと、近年の論点の移り変わりがつかめます。経済面の分析は、令和2年版経済財政白書の女性の就業と出生の章で補えます。

どの白書が扱っているか

特集 章 言及 扱いなし

白書令和2令和3令和4令和5令和6令和7令和8
経済財政白書女性の就業と賃金格差章言及言及
情報通信白書白書データに記載なし
防衛白書白書データに記載なし
食料・農業・農村白書令和2年版で女性農業者特集
厚生労働白書令和3年版で女性への影響章言及言及
中小企業白書白書データに記載なし
男女共同参画白書全年版の主題特集特集特集特集特集特集特集
科学技術・イノベーション白書白書データに記載なし
犯罪白書女性犯罪者と性的な被害章言及

省庁ごとの切り口

男女共同参画白書(内閣府)内閣府(男女共同参画): 毎年の特集で男女の差を分析

男女共同参画白書は、このテーマを毎年の特集で正面から扱います。令和2年版は家事・育児・介護と仕事のバランスを生活時間の長期推移から分析し、令和3年版はコロナ下で顕在化した課題を検証しました。令和4年版は世帯単位から個人単位の保障・保護への見直しを打ち出し、令和5年版は「令和モデル」への転換を提唱しています。令和6年版は仕事と健康の両立、令和7年版は地域ごとの家事関連時間の差や女性首長・議員の割合、令和8年版は学び直しの男女差を取り上げました。

経済財政白書(内閣府)内閣府(経済財政): 女性の就業と賃金格差のマクロ分析

経済財政白書は、女性の就業を経済全体の成長と分配の問題として扱っています。令和2年版は女性の就業と出生を巡る課題を第3章で取り上げ、女性の正規雇用比率が若年期をピークに年齢とともに低下する「L字カーブ」の解消を含め、出産・子育て期を通じた継続就業の促進を分析しました。令和4年版は労働の質の向上に向けた論点として、非正規雇用や税・社会保障による再分配と並べて男女間の賃金格差を挙げ、令和5年版は共働き世帯が子育てと仕事を両立できる環境づくりを、少子化への対応と結びつけています。

厚生労働白書(厚生労働省)厚生労働省: 危機の下で女性に偏った影響

厚生労働白書の白書データでは、令和3年版が女性への影響を正面から分析しています。感染拡大の影響を5つのテーマに分けた中で女性への影響を取り上げ、影響が非正規雇用労働者や女性、子どもなどにより大きく及んだと指摘し、性差によって負担に偏りが生じない社会づくりを論点に挙げました。令和4年版は担い手不足の克服に向けて女性や高齢者などの労働参加を進める必要性を示し、令和6年版はG7各国との比較で日本の女性の自殺死亡率が最も高い水準にあることを示しています。

食料・農業・農村白書(農林水産省)農林水産省: 女性農業者を初めて特集

食料・農業・農村白書は、令和2年版で女性農業者を白書として初めて特集のテーマに据えました。令和元年が男女共同参画社会基本法の施行から20年の節目にあたることを踏まえ、農業・農村で活躍する女性の状況と今後の取組の方向を整理しています。担い手に関する論点を、女性農業者の現状という切り口で掘り下げた点が特徴です。男女共同参画白書以外の白書が女性を特集の主題に据えた例として、横断的に読む際の手がかりになります。白書データの範囲では、その後の年版で女性農業者を特集とした記述は見当たりません。

犯罪白書(法務省)法務省: 女性犯罪者の実態と潜在化しやすい被害

犯罪白書は、犯罪と被害を性別の視点から分析しています。令和6年版は女性犯罪者の実態と処遇を特集し、女性の検挙人員の57.1%が窃盗でその75.7%が万引きであることや、女性受刑者等への特別調査で精神疾患がある割合が男性より高いことや、配偶者・交際相手からの被害経験、高齢女性の孤立といった女性に特有の背景を示しました。令和7年版は犯罪被害実態(暗数)調査で、性的な被害の申告率が25.0%、DV が16.7%と低く、被害が潜在化しやすい実態を示しています。

扱いの変遷

  1. 令和2年版男女共同参画白書が家事・育児・介護と仕事のバランスを特集し、経済財政白書は「L字カーブ」の解消を含む女性の継続就業を分析しました。食料・農業・農村白書は女性農業者を初めて特集しています。
  2. 令和3年版コロナ下で接触型産業が打撃を受け、非正規雇用で働く女性への影響が「女性不況」として注目されました。男女共同参画白書と厚生労働白書がともに女性への影響を分析し、男女共同参画白書は配偶者暴力や自殺者数の動向も取り上げました。
  3. 令和4年版男女共同参画白書が人生100年時代の結婚と家族を特集し、世帯単位から個人単位の保障・保護への見直しを打ち出しました。経済財政白書は男女間の賃金格差を、労働の質の向上に向けた論点に加えています。
  4. 令和5年版男女共同参画白書が「令和モデル」への転換を提唱し、男性の長時間労働など昭和の慣行の見直しを求めました。「L字カーブ」や男女間賃金格差はまだ解消されていないとの認識も示しています。
  5. 令和6年版男女共同参画白書が仕事と健康の両立を特集し、女性特有の健康課題や職場に求める配慮の男女差、健康経営の効果を分析しました。犯罪白書は女性犯罪者の実態と処遇を特集し、女性に特有の背景を示しています。
  6. 令和7年版男女共同参画白書が分析の単位を地域に移し、若い女性の地方からの転出や、女性の知事・市区町村長・議員の割合を示しました。犯罪白書は、性的な被害や DV の申告率の低さを示しています。
  7. 令和8年版男女共同参画白書が学び直しを特集し、学ぶ意欲と実際の学習行動の差や、家事・育児・介護等による時間の制約が女性の学び直しの障壁になっている点を分析しました。障壁は「金銭的余裕がない」が男女とも最多です。

主な数字

項目数値出典
固定的性別役割分担意識に反対する割合(2019年調査、令和2年版男女共同参画白書)女性63.4%、男性55.7%令和2年版 男女共同参画白書
ジェンダー・ギャップ指数の日本の順位(令和3年版男女共同参画白書)刊行に当たっての大臣の言葉で言及156か国中120位令和3年版 男女共同参画白書
ワンストップ支援センターの相談件数(令和2年度、令和3年版男女共同参画白書)前年度の約1.2倍5万1,141件令和3年版 男女共同参画白書
月経不調で仕事や生活に支障がある女性の割合(令和6年版男女共同参画白書)月経のある女性のうち。20代・30代では9割8割令和6年版 男女共同参画白書
精神疾患がある女性受刑者の割合(令和6年版犯罪白書の特別調査)男性は22.6%53.5%令和6年版 犯罪白書
妻と夫の家事関連時間の差(令和7年版男女共同参画白書)全ての都道府県で妻が長い210分以上令和7年版 男女共同参画白書
女性の都道府県知事(令和7年版男女共同参画白書)47名中2名(4.3%)令和7年版 男女共同参画白書
学ぶ意欲があっても過去1年以内に学んでいない女性(令和8年版男女共同参画白書)仕事や職業キャリアに関する学び直し。男性は約6割約7割令和8年版 男女共同参画白書

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